パガニーニ作曲の24のカプリースより第19番を徹底解説
パガニーニカプリース第19番はどんな曲なのか?
練習するときに何を気を付ければ良いか、についてまとめています
『パガニーニカプリースを弾いてみるのが夢、楽譜は買ってみたけど練習の仕方がわからない・・・』
こんにちは、超絶緊張しいヴァイオリニストのめっしーです
パガニーニ作曲の24のカプリースは、ヴァイオリンを弾く人にとって憧れの曲
『いつかはパガニーニカプリースを弾いてみたい』、少なくとも僕はそう思っていました
ヴァイオリン弾きなら、パガニーニカプリースを弾いてみて欲しい
パガニーニ・カプリースはヴァイオリンの弾き方を教えてくれる
パガニーニを弾くと、どんなに自分が力んで弾いているのかがわかる
パガニーニは力まず、楽に弾かないと太刀打ちできない
そして、力まず、楽に弾かないと楽器が全然ならない
楽に、自然にと考えるのがパガニーニのポイント
— めっしー@あがり症のヴァイオリニスト (@messi_agarisyo) August 9, 2021
どうやったら自然に、楽に弾けるようになるか、パガニーニカプリースを弾くことで知ることができる
今回はパガニーニカプリースから第19番がどんな曲なのか?どうやって練習すれば良いのかについて解説しています
パガニーニカプリースを弾いてみたい、そんなときに助けになれば良いと思って記事を書いているよ
パガニーニカプリースの第19番は、他の曲と比べて難易度は低め
大きなポジション移動はあるけど、フィンガード・オクターブとか、重音だらけとか、鬼難しいところはない
パガニーニの世界観、音楽をわりと気軽に感じられる曲です
この記事の内容は著書も出版しているヴァイオリンのプロの先生から、直接レッスンで教えていただいたことをもとにしています
信頼性が高い情報なので、パガニーニカプリースにチャレンジするときの参考にしてみてくださいね
*今回はインターナショナル版ガラミアン編の、パガニーニカプリースの楽譜を元に解説しています
それじゃあいってみよう
パガニーニカプリースより第19番ってどんな曲?
パガニーニカプリース第19番ってどんな曲?
パガニーニが作曲したカプリース第19番が、どんな曲なのか見て行こう
パガニーニがどんな人だったか知りたい、そんなときはこちらをチェック▽
Lento(レント)ーAllegro assai(アレグロ・アッサイ)
変ホ長調 4/4拍子
オクターヴ重音によるレントの短い序奏のあとで、すぐにアレグロ・アッサイ 変ホ長調4/4拍子となる。
ここからはスタッカートと重音とか規則的に用いられ、中間部はハ短調でG線のみによる速い16分音符のパッセージ。
シューマンの「6つの演奏会用練習曲」作品3の第5番の原曲。
MIDORI・PAGANINI 24 CAPRICES 渡辺和彦解説
実際にパガニーニカプリースより第19番を聞いてみよう
冒頭のLento(レント)はオクターブの重音
冒頭のLento(レント)はオクターブの重音です
オクターブでのポジション移動が難しそう
頭でしっかり音をイメージしてから、ポジション移動をしよう
ちなみにLento(レント)は、”のろまな、気長な”っていう意味
スローモーションで動いているような、ゆっくりとした動きをイメージして弾こう
Lento(レント)の曲で有名な曲として、ピアニストのショパンが作曲した『別れの曲』があります
ショパンが作曲した『別れの曲』が聞きたい、そんなときはこちらをチェック▽
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)はアップボウスタッカートとsul Gの練習
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)は、前半と後半がアップボウスタッカートと重音の練習で、中間部はsul G(G線だけで弾く)の練習になります
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)の前半と後半部分はアップボウスタッカートと、重音の連続
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)の中間部分はsul G(G線だけで弾く)
sul G地獄だけど、熱く弾ける(感情をたっぷり入れて弾ける)ポイントで楽しそう
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)はAllegro=『愉快な、陽気な、はつらつとした』とassai=『極めて、非常に』が合わさってAllegro assai=『極めて愉快な、陽気な、はつらつとした』という意味
夏の太陽の下でめちゃくちゃ元気に動き回る、おっちゃんみたいなイメージです
Allegro assaiの曲にはモーツアルト作曲の《交響曲第40番の4楽章》なんかがあります
モーツアルトが作曲した《交響曲第40番の4楽章》を聞いてみたい、そんなときはこちらをチェック▽
パガニーニカプリース第19番をもとにして作られた曲
作曲家のシューマン(1810年~1856年)は、今回話している『パガニーニカプリースより第19番』に影響されて『6つの演奏会用練習曲』作品3の第5番を作曲しています
シューマンはパガニーニの演奏を聞いて、音楽家として生きていくことを決めたんだ
シューマンは法律家になるか、音楽家になるか、めちゃくちゃ悩んでいたみたいだね
シューマンが作曲した『6つの演奏会用練習曲』作品3を聞いてみたい、っていうときはこちらをチェック▽
*下の動画の「8分21秒~」が 『パガニーニカプリースより第19番』をもとにして、シューマンが作曲した部分になります
パガニーニカプリースより第19番の弾き方
パガニーニカプリースより第19番の弾き方について話していくよ
アップボウスタッカートの弾き方
パガニーニカプリース第19番のAllegro assai(アレグロ・アッサイ)出ててくるアップボウスタッカートは、次のことを意識してみてください
- 弓を軽く持つ
- 弓の中から元で軽く弾く
- 一番音が鳴るポイントを探す
弓を軽く持つ
アップボウスタッカートはp(ピアノ)で軽く弾く
軽い音を出すために、弓は軽く持ちます
弓を軽く持つと、腕の重さが弓に伝わりにくくなるので、軽い音が出しやすいです
小鳥のヒナを優しく持つように、弓を持ってください
アップボウスタッカートは”小鳥のさえずり”のイメージ
弓の中から元で弾く
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)のアップボウスタッカートは、弓の弾力を利用して弾く必要があります
なので、弓の弾力を感じやすい弓の中から元を使って、弓の弾力を感じながら弾きます
先弓だと、弾(はず)んだ軽い音は出しにくい
一番音が鳴るポイントを探す
弓を軽く飛ばして弾くと、どうしても雑音が多くてペッ、ペッとしょぼい音になりがち
しょぼい音にならないように、一番音が鳴るポイントを探そう
弓の弾く位置を駒(こま)よりじゃなくて、少し指板(しばん)よりで弾くとペッ、ペッという雑音が少なくなります
アップボウスタッカートは弓を飛ばして弾くんだけど、弓を弦にぶつけただけのしょぼい音にならないように注意
重音の弾き方
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)では、アップボウスタッカートと重音が交互に出てきます
この重音を弾くときのポイントは、次の2つ
- 弓を弦に押し付けない
- 左手も弦を軽く押さえる
弓を弦に押し付けない
重音の強弱記号がf(フォルテ)だからといって、弓を弦に押しつけて音を潰(つぶ)さないようにしてください
f(フォルテ)だからと言ってガシガシと圧力をかけて弾くと、楽器の響きを止めてしまって、音が美しくない・・・
f(フォルテ)ではあるんですが、楽器の響きを止めないように、豊かなf(フォルテ)の音で弾こう
左手も弦を軽く押さえる
右手だけでなく、左手も弦を軽く抑える押さえます
意外と盲点ですが、左手で弦を強く押さえると楽器の振動が止まる
そして左手にチカラが入ると、右手にもチカラが入って音を潰しがちになります
左手での弦の押さえ方も、音色に影響するんだね
重音の差音を聞く
2つの音の重音が出てくるときは、差音をしっかり聞こう
差音って何?
差音って何のこと?
差音(さおん)は、結合音の一種で、周波数の異なる2つの音を同時に鳴らした時に聞こえる、2つの音の周波数の差に等しい周波数の音である。
差音 – Wikipedia
もっと簡単にいうと、2つの違う音を鳴らすと、もう1つの音が鳴る自然現象のことです
2つの音を弾いているのに、実際には3つの音が鳴っている状態、ということです
意味不明だと思うのでもっと具体的に考えてみよう
例えば、ドとミを弾いたとする
差音という自然現象が起こると、ドとミ以外にもう1つの音がなります
つまり、 重音でドとミを弾くと、ドとミともう一つの音の3つの音が鳴ります
2音の重音を弾いているのに、実際には3和音になっているということ
パガニーニカプリースに出てくる重音は差音が聞きやすい
パガニーニカプリース第19番に出てくる差音は、比較的聞きやすいです
例えば14、15小節目の重音の差音は聞き取りやすい
実際に弾いている音以外に、低い音が聞こえるよ
差音を聞きとれるようになると、もっと美しい和音で楽器を響かせられるようになる
sul Gでの大きなポジション移動は音を鮮明にイメージして
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)の中間部のsul G(G線だけで弾く)のところに、大きなポジション移動が出てきます
このsul Gで大きなポジション移動をするときのポイントは2つ
- ポジション移動後の音を鮮明にイメージしてから、ポジション移動をする
- ポジション移動をするときは左手を楽に
ポジション移動後の音を鮮明にイメージしてからポジション移動
大きなポジション移動をするときは、音を鮮明に、ハッキリとイメージしてからポジション移動をする
ただでさえ難しいのに、音のイメージがあやふやだと音程は絶対当たりません
音のイメージがないっていることは、目標の音程があやふやになっていることと同じ
目標があやふやであれば、そりゃあ音程が当たるわけないです
しっかり音をイメージして、音程を狙っていこう
ポジション移動をするときの左手は楽に
ポジション移動をするときは左手をできるだけ楽にしてください
力(チカラ)が入っていると、スムーズなポジションができません
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)のポジション移動は、短い時間で大きなポジション移動が必要なので、力(ちから)が入ってぎこちなくなると、テンポにまったくついていけない
これだけ大きなポジション移動をG線&短時間でやると思うと、効率的に、楽に、自然にポジション移動ができないと難しい
Allegro assai(アレグロ・アッサイ)のポジション移動を通じて、楽な、自然なポジション移動を見直そう
まとめ
今回はパガニーニカプリース第19番がどんな曲なのか?、どんなことに気をつけれ練習すれば良いかについてお話してきました
この記事の内容を振り返ってみよう
- パガニーニカプリース第19番はLento(レント)とAllegro assai(アレグロ・アッサイ)でできている
- Allegro assai(アレグロ・アッサイ)で出てくる、アップボウスタッカートは弓を軽くもつ
- アップボウスタッカートするときは、楽器が鳴るポイントを探す
- 重音は音を潰さないように、差音を聞く
- 大きなポジション移動は、頭で音を作ってから移動する
パガニーニカプリースの中で、今回紹介した第19番の難易度はそんなに高くありません
それなりに音階やエチュードを弾いていれば、なんとかなる(笑)
難しそうって理由でパガニーニカプリースを避けているなら、ぜひ19番を弾いてみてください
パガニーニの世界を感じることができますよ
参考音源
パガニーニ・24のカプリースの、参考音源を載せておきますね
五嶋みどりさんのパガニーニ:カプリース
五嶋みどりさんのパガニーニカプリースが、一番のおススメCDです
五嶋みどりさんは日本を代表する天才ヴァイオリニストです
『日本人ヴァイオリニストの頂点=五嶋みどりさん』と言っても良いぐらい
このCD↓は五嶋みどりさん17歳の録音になります
10代とは思えないほどのテクニックはもちろん、音楽性がもう素晴らしい
五嶋みどりさんの美音、そして芯のある音楽性を存分に味わえる一枚
ユリア・フィッシャーさんのパガニーニ:24のカプリース
もう一つのおススメ音源は、ユリア・フィッシャーさんのパガニーニカプリースです
ユリア・フィッシャーさんの演奏は余裕すら感じる演奏です
パガニーニのカプリースはショー的な要素が強くて、『俺はこんなにヴァイオリンが上手いんだ』ということ見せつける曲
でも、 ユリア・フィッシャーさんの演奏は『俺はこんなにヴァイオリンが上手いんだ』ということ見せずに、一音一音丁寧に演奏している印象でした
派手さはない、けれどパガニーニの本当の美しさを知れる一枚