- バッハ作曲の無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番より、プレストの弾き方について徹底解説!
- 単旋律に見える、でも実はポリフォニーで、いろんな音楽が入り混じっている曲
- オルガンの響きで、密度の高い音で弾く、開放弦が一番鳴るポイントを探す、いろんなリズムからできてる、ポリリズムな曲であることを理解して弾く、などなど・・・
- レッスンで直接教えていただいた内容を中心に、画像&動画付でわかりやすく解説しています!
ヒラリ・ハーンのソナタ1番のプレストを聞いてから、プレストを弾きたくてたまらなくなった。
勢いでバッハの無伴奏の楽譜を買って、プレストを弾いてみたんだけど、こんなんでいいんかな・・・
どんなことを考えて弾けばいいのかなー
この記事では、こんなお悩みを解決します
- この記事の信頼性
Twitter(@messi_agarisyo)
・プロ奏者を輩出する教室でヴァイオリンを学ぶ
・日本トッププロ奏者(NHK交響楽団で弾いてた先生、プロオケでトップを弾いていた先生・・・)にも指導を受けた
・この記事の内容はヴァイオリンの本も出版されている先生から、直接レッスンを受けた内容を中心にまとめています
こんにちは、超絶緊張しいヴァイオリニストのめっしーです
今回は無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番から、プレストについてお話します
ソナタ1番のプレスト、一見するとモノフォニー、単旋律の音楽に見える。
でも、実は単旋律じゃない、
ポリフォニーの音楽、4声とかの。
どうすればポリフォニーに見えるのかっていうのを考えると、めっちゃめちゃ面白い曲、
ここはどんなパートが隠れてるんだろう?って。
この記事では無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番の、プレストの面白さを知ってもらうことが一番の目的、
そして、練習方法とか、どんなことを考えてさらったら良いか、お話していこうと思います。
書籍の出版もされている先生から、直接教えていただいたことを中心にお話ししています。
ぜひ最後まで読んでみてくださいね
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタってどんな曲?
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタは、バッハ 35才のときの作品
35才ごろのバッハは、自分のやりたい音楽に没頭できた時期、
一方で、妻が急死するという悲しみでいっぱいだった時期の作品。
35才のときのバッハの上司は、超音楽好き。
バッハの才能に気が付いていたバッハの上司は、バッハに音楽に没頭できる環境を与える
このときのバッハは、こんなことを言っている
レオポルド様(バッハ35才当時の上司)は音楽を愛し、音楽への理解がとても深い。こんな良い方はいない。
レオポルド様のもとで音楽を続け、生涯を終えたい。
音楽に没頭できる環境の中で、バッハは様々な試行錯誤を行う。
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタも、その試行錯誤の中で生まれた曲。
ヴァイオリンってもともと単旋律を奏でるための楽器なんだけど、バッハはヴァイオリンでポリフォニー(たくさんの旋律からできてる曲)を奏でるというチャレンジに出る
それが無伴奏ヴァイオリンのためのソナタであり、パルティータ。
音楽に没頭できる環境で幸せいっぱいな時期だったんだけど、妻の死を経験した絶望的な時期でもあった
ソナタじゃないんだけど、パルティータの『シャコンヌ』っていう曲は急死したバッハの妻のために書かれた曲と言われている
バッハの亡き妻のために書かれた曲、『シャコンヌ』を聞いてみたいっていうときはこちらをクリック
今回解説するプレストは、6曲ある無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータの中で、1番最初の曲であるソナタ1番の最後の曲
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番は4楽章で出来てて、プレストはソナタ1番のトリ
プレストって書いてある通りで、スピード感のある曲
一見すると、単旋律に見える、
でも、実はプレストってポリフォニーでいろんな旋律が入り混じっている
単旋律にしか見えねえ(笑)
まあ、そうやわ(笑)
ぼくもレッスン受けるまでポリフォニーには見えなかった(笑)
あとでどう見たらポリフォニーに見えるか、詳しく説明するよ
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番のプレストを聞いて、イメージを膨らましてから、具体的な弾き方について話していこうと思う
無伴奏ソナタ1番のプレストの弾き方、考え方
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番のプレストの弾き方、どんなことを考えて練習したら良いかお話するよ
バッハってめっちゃいろんな弾き方、考え方があります、答えがないっていうのが正直なところ。
いろんな正解の中のひとつとして見ていただけるとうれしいです。
密度のある音で
ソナタ1番のプレストの弾き方なんだけど、まずは右手から。
基本は密度のある音で弾こう。
バッハの一番の得意楽器って、なんだか知ってますか?
バッハってオルガニストなんですよ、オルガン奏者
バッハの頭の中で、一番鳴っていた音はオルガンの音。
教会で鳴り響く、オルガンの音。
だから、バッハの無伴奏で目指すべき音ってオルガンの音なんだと思う。
オルガンの音って、けっこう密度のある音で、音は減衰しないで伸びる
ヴァイオリンでオルガンの音を表現しようと思ったら、やっぱりスカスカな密度の低い音じゃなくて、音の詰まった密度の高い音が必要だと思う。
まずは密度の高い音で、しっかり楽器が鳴ってる音で弾こう。
オルガンの音を目指そう。
オルガンなんてほとんど聞いたことねぇってときは、オルガンの音を聞いてみよう
《フーガ ト短調 BWV 578》っていう曲
オルガンの音を聞いて、イメージを膨らませたら、音を出してみよう。
密度の低い音↓
密度の高い、音が詰まった音↓
開放弦が共鳴して鳴っている音を聴く、聴く、聴く
プレストを弾くときに大切にして欲しいのが、開放弦の音を聴くってこと
共鳴して、振動して鳴っている開放弦の音を聴くっていうこと。
音程がピッタリ合って、開放弦がしっかり鳴ると、曲全体の響きが全然違う。
教会で鳴ってるオルガンの音に近づく。
ソの音を弾いたら、開放弦のソが共鳴して鳴るし、
レの音を弾いたら、開放弦のレが共鳴して鳴るよー
ソナタ1番のプレストの冒頭を見てみよう。
開放弦が共鳴する音がたくさん出てくる。
開放弦と共鳴する音、開放弦とおんなじ音、ソ、レ、ラ、ミが音程がピッタリ合って、
開放弦が共鳴して鳴っているかを聴く。
インテンポで、速く弾く必要なんて全然なくて、始めはゆっくりから、
ゆっくり弾きながら開放弦が鳴っているか確認しよう、
もっと開放弦がしっかり鳴って、もっと楽器が鳴るポイントを探していこう。
もっと、もっと。
もっと開放弦が鳴る、弓の持ち方を探す
開放弦が共鳴して鳴って、ボワって楽器が鳴ってる感じの音を出したいんだけど、
音程に気をつかうだけじゃなくて、弓の持ち方を考えるのもアリです。
例えば、今持ってる弓の持ち方から少しだけ先を持ってみる。
響きはどう?開放弦、さっきよりはたくさん鳴ってる?
じゃあもう少し先は?
今度は響きがなくなったね、さっきの場所が一番、音が鳴るポイントだね
弓を持ち場所が適切だと、何もしなくても開放弦が鳴ってる音、ボワっていう音が自然に出る
私の場合、少しだけ先を持つと、開放弦が鳴って、豊かな響きになった。
弓から弦に伝わる力が減って、楽器の響きを止めずに済んだからかなー
#は#らしく、♭は♭らしく。
ソナタ1番のプレストだけじゃないんだけど、
#は#らしく、♭は♭らしく弾こう。
もっと簡単言うと、#は音程を高めに、♭は音程を低めにとるっていう意識を持ってね、っていうこと
プレストって書いてあるとおり、この曲はスピーディな曲、速い曲。
テンポが速くなればなるほど、#とか♭を意識しないとおかしくなる、
#は#らしく、♭は♭らしく取らないと、なーんか変っていう感じになる
方向性がなくなるって言ったらいいのかな、
自分の演奏を録音して聞いてみて、なんかしっくりこない、なんか気持ち悪いっていうとき、#は#らしく、♭は♭らしくっていう意識を持って弾いてみると、けっこうマシになったりする
冒頭を分解してみる【単旋律じゃなくて、ポリフォニーだわ】
冒頭からけっこう面白くて
一見すると単旋律に見えると思うけど、そうじゃないです。
冒頭から3小節を分解してみよう
こんな感じに見えないだろうか?
付点八分音符で歌っている人がいて、
その音の中でもう一人が、下っていく。
いや、もう一人いるね、
開放弦も共鳴して鳴ってるから、少なくとも3声の音楽に聞こえる。
パッと見、単旋律の曲かと思いきや、バッハはポリフォニー(たくさんの旋律からできてる曲)を表現したかったんだねー
隠れているメロディーを探す
9から11小説目。
ここにメロディーが隠れている
一緒に考えてみよう
8小節目から弾いてみるね
どうだろうか、譜面どうりの音しか聞こえないだろうか。
こんなふうなメロディーは聞こえないだろうか
そんなの聞く人によるって言われたらそれまでだし、バッハが本当にこのメロディーを意識していたかはわからない。
でも、こんな風に隠れているメロディーを探しだすのってシンプルに楽しい、バッハと対話してるみたい。
このフレーズ、隠してたでしょって。
もちろん、正解はないんだけれども。
2拍子と3拍子が入り乱れるポリフォニー
ソナタ1番のプレストは、ポリフォニーっている話をしてきたんだけど、
実は、ポリリズムな曲でもある
パット見、3/8拍子だから1・2・3・1・2・3・・・って3拍子みたいに続いていきそうなんだけど、そうじゃない
2拍子になったり、3拍子になったりする
いろんなリズムが出てくる
実際にプレストの楽譜を見てみよう
冒頭部分、ここはどう見えるだろうか?
ぼくには2拍子に見える。
1・2・1・2・1・2っていう感じにみえる、
3つの音符で一つの固まり。
9小節からはどうだろうか?
ここからは楽譜に書いてるとおり、3/8拍子に見える、3拍子みたいに
1・2・3・1・2・3・1・2・3・・・って感じ。
9小節目は2拍子にも見えるんだけど、さっき説明した隠れたメロディーがぼくには3拍子に聞こえるから、小節目は3拍子
12小節目は見るからに3拍子だね。
こんな感じに、ソナタ1番のプレストはリズムが移り変わっていく
ポリリズム。
なんていうかな、リズム遊びをしているというか、
ソナタ1番を弾くときに、ここは2拍子なのか、はたまた3拍子なのか?
そんなことを考えながら楽譜を眺めたり、弾いたりするともっと楽しくなる、面白くなる
1回目より2回目、2回目より3回目、4回目はスペシャルに
25小節目から、28小節目、
同じ感じの音形が4回出てくる
ここでのポイントは、
1回目より2回目、
2回目より3回目、
4回目は超スペシャルな感じでっていう点。
もっと簡単にいうと、だんだんクレッシェンドしてねってことかな、どんどん盛り上げていく感じ、迫りくる感じ。
スペシャルってなんなんだよ。。。って思うかもなので、ちょっと弾いてみます
宇宙を感じる瞬間。
もうめっちゃ細かいところ、
38小節目、40小節目、
ここ、なんか宇宙を感じるところです
意味わかんないですね(笑)
なんでこんな普通そうなところに、ぼくは宇宙を感じているのか、
それは昇る音形と、下りの音形が同時に出てきているから。
もう一度、38小節目を見てみよう
高い音のパートは昇る音形で、低い音のパートは下る音形、
音が昇ってるのか、下がっているのか、悪く言えばどっちつかずで、
なんかフワフワしている感じ。
バッハの曲ってなんか神秘的で宇宙的というか、そんな部分が38小節目、40小節目のたった2小節に出てる
昇る音階と下る音階が重なって、宙に浮いた感じになるっていう構成、これ、ベートーベンにも出てくる。
例えば、ベートーベンの交響曲第九番、《第九》と呼ばれる曲なんだけど、《第九》の1楽章に昇る音形と、下る音形が同時に出てくる部分があったりする
ベートーベンの《第九》の昇る音形と、重なる音形が同時に出てくるとこってどこ?って思ったらこちらで詳しく説明してます
ベースの音を意識して【重さを乗せる感じ】
43~45小説目はバス、ベースの音を意識しよう
ベースの音を意識することで、推進力が生まれる。
43~45小説目はベースがズンズンって鳴ってる中、旋律が流れるところ
楽譜によってはベースの音にテヌートが付いてたりする、1拍目と3拍目。
3拍目にテヌートがついているのがポイントで、1拍目だけじゃなくて、3拍目も強調することで、リズミカルになって、推進力がでる
どんな風に強調したら良いかっていうと、ベースのところ、テヌートのところに重さを乗せる感じ。
腕じゃなくて、下腹に重さを乗せる感じが良いです
下腹に呼吸を入れる感じ
腕で強引に圧力をかけると、音がつぶれちゃうので。
弾いてみるとこんな感じ↓
ラからシ♭への移り変わりを楽しんで
47~50小説目、
ここもベースの移り変わりを楽しもう。
ベースの音に注目すると、一つ目のベースの音はラ、二つ目の音もラ、三つ目の音もラ、やっと4つ目のベースの音でシに上がる
じれったい。
力を溜めてるって言った方が正しいか。
もちろん、意図してやってるんだと思う
音が上がりたいのを我慢して、我慢して、我慢してからのシ
だからこのシ♭は特別で、聞いてる人にもわかるように意識して弾くのが良いです。
ヘミオラを意識して【ヘミオラは緊張感を生み出す】
87~93小説目は、ヘミオラと呼ばれる作曲技法が使われてるところ
ヘミオラを簡単に超説明すると、こんな感じに↓拍をわざとずらす方法のこと
3つの音でワンセットなんだけど、ワンセットが小節をまたいでいる
普通は、ワンセットが小節をまたぐことってないです
わざとリズムをずらしてる、拍をずらしてるって言ったらわかりやすいかな
拍をわざとずらすことで、緊張感が生まれる
ずっと流れてた拍から外れることで、なんか不安感というか、緊張感が生まれる
ここの部分はオルガンって言ったらオルガンがガンガン鳴っているところ、
教会でオルガンが鳴り響いているところ、
ヘミオラっていう方法を使うことで、オルガンが鳴り響いてる感じを出したかったんだと思う。
大きい音の緊張感というか、切迫感というか、何か迫り来る感じというか。
まとめ:ポリフォニーを楽しもう、隠れている旋律を探そう
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番、プレストを面白く弾くには、
単旋律じゃなくて、ポリフォニーだっていうことを意識することが大事。
ポリフォニーって意識するともっと楽しく弾ける、面白く弾ける
この部分はどこのパートが歌ってるんだろう?ソプラノ?アルト?テノール?それともバス?って。
ぜひそんなことを考えながら弾いてみてください、バッハの魅力がもっとわかると思います。
聴いて欲しい、バッハ無伴奏の名盤
参考にバッハ無伴奏の名盤を紹介するよ
シェリングのバッハ無伴奏
聴いて欲しいバッハ無伴奏、シェリングの演奏。
シェリングの演奏聞いてて思うのは、バッハをもう、とてつもなく尊敬してるっていうこと。
バッハのやりたかったことをくみ取って、演奏に取り入れているってこと。
なんというか、バッハ無伴奏の目指すべき音、オルガンの響き、教会に響く演奏に一番近いと思う。
まずは、シェリングの演奏を聞く、どんな音を目指すべきかを知る、そして音を出す。
ぜひ聞いてみて欲しいです
クレーメルのバッハ無伴奏
個人的にはこっちの方が好きというか、共感できるというか、
もう一人だけ、クレーメルのバッハ無伴奏。
なんだろう、孤独って言ったらいいのかな、寂しさがあるっているか、
ぼくはそんな孤独感にすごい共感する、繊細、孤独、クレーメルってそんな人なんじゃないかな、知らんけど。
どちらかというとクレーメルの演奏は独特なんだけど、内向的で、孤独に悩んでいる、そういう人が聴いたらシェリングのバッハ無伴奏よりも何か、共感できるんじゃないかな。
シェリングとは対極的な、もうひとつの正解、クレーメルのバッハ無伴奏。
いろんな楽譜を見てみよう
バッハの無伴奏ヴァイオリンを弾くってなったら、いろんな楽譜を見た方がいいと思う
楽譜によって、指とか、スラーとか、全然違う
ぼくはバッハの無伴奏を4冊持ってる。
- インターナショナル版
- ベーレンライター版
- ショット版
- ISR版
最初はインターナショナル版を使ってたんだけど、別の先生に習うときにショット版を進められた
全然違う
ショット版、めちゃくちゃ弾きやすいし、音楽的。
そう思った
楽譜によって印象が違う、時間とお金余裕があるなら、いろんな楽譜を見比べるといろんな発見があります