いろいろ迷いがあって、
30過ぎて、良い年になって、時間も有限でないことに気づいて、
さてこの有限な時間をどう使おうかとか、
ヴァイオリンの曲も、ヴィオラの曲も星の数ほどあって、
ぜんぶ弾くには時間が足りなくて、でもどれを弾いたら良いかという明確なモノなくて、
羅針盤も持たずに歩いている感じがして。
迷っていたわけです。
でも前に進まなくちゃいけないわけで、いろんな演奏とか聴きまくってみたり。
自分がどこに向かえば良いのか、少しでも推進力となる人が欲しい、といったらいいだろうか。
You Tubeで篠崎史紀さん(N響のマロさん)の演奏を見つけた。
マーラーのアダージェットを弾かれていた(篠崎さんのアダージェットはこちら)
涙が止まらなかった。
自分をうまく見せたい、とか、そんな私利私欲はまったくなくて、
ただただ、隣に座って、ただただ自分のために語ってくれている。
ステージ上で、大多数に語りかけるんじゃなくて、ただその人のために歌っている。
涙が止まらない。
この演奏を聞いて、ぼく自身が求めるもの、これなんじゃないかと思った。
コンクール何位入賞だかわからないが、そんな人のチャイコスキーのヴァイオリン協奏曲を聴いててもなんとも思わなかった
言葉はただ悪いが、ただただ整然と音符が並んでいるだけ。
確かに上手いんよ。どんだけ凄いのかもヴァイオリンをやっていればわかる。
でも、何も感じない。
そんな人の心を動かせない演奏をして、そういう技術だけに偏った演奏を目指したいかと言われれば、そうじゃなくて、
やっぱり、音楽をする目的って、心の会話であって、相手の心を動かしたいと思って。
別に上手い演奏をする必要はなくて、たった一音でも良いから、心を動かせる演奏をしたい。
心を動かすためにはなんだろう、ただ一人のために弾くのが良いなじゃないかと思って。
大多数に偉そうに語りかける演説じゃなくて、たった一人のために音楽をする。
そういうのが僕の求めているところなんじゃないかと思った。篠崎さんの演奏を聞いて。
今も篠崎さんのアダージェットを聴いて、鼻水かみまくってる。
篠崎さんのような音が出せるように、心を動かせるような音に近づけるように、少しずつでも良いから前進していきたい。